NY市アフォーダブル・ハウジング政策の現在
ニューヨーク市の家賃の高さは衝撃的。円換算するとワンルームマンションの家賃平均はマンハッタン区のドアマン付物件で32万円、ドアマンなし26万200円、ブルックリン区でも23万5600円(以上、2016年2月時点での取引物件平均)、2000−2012年で74.6%上昇した。このような状況のなか、2013年ビル・デブラシオはアフォーダブル・ハウジング(適正価格住宅)創出をキャンペーンの柱の一つにし、24年ぶり民主党市長となった。 ところが現地でこの問題を調べ始めて、このデブラシオのアフォーダブル・ハウジング政策の批判をよくきく。それも元々の反対層というより、2013年に支持した層の中で批判が強まり、反対運動があちこちで起きている。問題になっているのが住宅創出の手段とされるMandatory Inclusionary Zoningプログラム。住宅開発業者に対し規制緩和を行う代わりに、建設住宅の25~30%をアフォーダブル・ハウジングにするよう義務付けるもの(サンフランシスコなどでも行われているが、適正価格住宅にあてる割合の高さや対象層の広さがニューヨーク市プログラムの特徴だ)。 同プログラムがかえって高層高級マンション建設を後押しし、また割り当てられるアフォーダブル・ハウジングも地元住民には高すぎて、結果的にコミュニティを破壊し、ジェントリフィケーションを加速させている、というのが批判の内容だ。抵抗運動の激しい地区の一つに、アフリカ系アメリカ人とカリブ海出身者が住民の四分の三を占めるクラウンハイツがある。同地区では数年前から再開発が始まり、現在も複数の計画が進み、この一年で家賃15%上昇、地元住民の追い出しが進んでいる。一昨日同地区で開かれた土地利用に関する住民会議でも、市のプランを紹介する市議と、それに反対する住民の間で激しい攻防が続き、警察が介入する騒動に発展した。興味深いことに同地区の抵抗運動の担い手はほぼ全員女性である。コミュニティ破壊に抗議し、仕事を掛け持ちしながら声をあげる彼女たちの崖ぷちの闘いが続く。